肺呼吸
酸素呼吸で生きている私の肺には空気が入っている。
だからどんなに深く沈んでも
どうしたって体は浮かびあがりたがる。
ここ、四国の南西の端は春がずんずんやってくる。
山も海も川も空も
鳥もカエルもとかげもイモリも大ミミズの勘太郎も蟹もエビもカメムシも
みんなそれぞれの体の仕組みにしたがって迷いなく行動する。
木も芽も花もどんどん自分を開いていく。
海は青くきらきらひかり、
水はゆるみ命が生まれ奇妙な幼生が溜まりに動いている。
その先の沖に去年の夏は泳ぎ出て
青い深い闇の潜む場所に強く惹かれてあこがれた。
美しくグロテスクな生き物や
官能的に開かれたサンゴの花びら。
海の深みはどうして狂気と連動しているのだろう?
これからまた何度もそこに潜っていくのだろうが
きっと必ず浮かび上がって、
太陽の下で
おおきく新しい息をすいこむのだ。
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