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2019年4月 2日 (火)

風の谷

東京都国分寺市風の谷二丁目の団地にはいつもビル風が吹いている。

高層階に住んでいた私は「さぞかし眺めが良いでしょう」と言われたけれど

窓から見えるのは

隣の建物またその奥の建物。

延々つづく団地の灰色の森のよう。

風が吹いても森の木はびくともせず、換気扇の隙間から

「ひゅううう〜〜」という音が聞こえるばかり。

窓の外には白いビニール袋が舞い上がっている。

春が近づくと

カラスがこの森で縄張り争いをはじめる。

団地の北と南に僅かに残った雑木林をつなぐ、

中間地点の灰色の森。

風に流されながら数羽が飛び交い、よく見ると、

それは多、対 1、の争いでよそ者を攻撃しているのか?

よそ者とは流れ者なのか。行く場所のないはみ出し者か。

無理、とわかると潔く一羽はどこかに立ち去っていく。

 

団地の人口密度は気が遠くなるほど。

私の部屋の真下には5世帯、真上には七世帯が、重なって住んでいる。

それぞれの想念感情思考は団地の周囲に漂い、異質な感情の高い山と深い谷の間を流れる気流が

風を呼び起こすのか。

 

風の谷、と呼び始めてからここが好きになった。

風は

とどまらず吹き抜けていく。

天空からやってきて無感情に吹き荒れる

巻き上げてひきちぎっておおきなちからで私を持ち上げる。

わたしは群からはなれて

空にをかける。

大きな翼を持つ鳥人間が近づいてくる。

空に住む彼は感情を理解しない。

私が泣いても気にもとめず

しばらく並走していたが新たな気流にのって西に向かっていった。

わたしは行き先も持たず

気流にも乗れず

今もまだ途方もない空でさまよっているのです。

 

 

 

 

 

 

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