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2018年10月

2018年10月12日 (金)

雨の演奏

林の中に車をとめて夜になって雨になって、

葉っぱから、たまった雫が不規則に落ちてきて、

車の屋根にあたる音がする。

闇の中で明かりもなくて

車の中で布団にくるまって

雨の演奏を聞いていた。


雨脚が強くなると

音は強く細かくなり、まるでフリージャズのドラムみたい。

タトタトタトタトタトタトツトットットツトン!

ツトトツトトツトトタタタタタタタタタツカッタッタツカトコトコツト!


セッションしてみる。


雨はなかなか根気が続かず

また弱くなると

音は間が空いてくる。

落ちる場所により、遠近感がある、たまに違う音になるのはなんでだろう。

屋根は均一な素材だろうに。

そうだ、

上に小さなシンバルとか太鼓とかつけたらこういうとき

めちゃ楽しいな。

などど

思ううちに夜は深まり

雨の演奏を聞きながら眠りに入っていきました。


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2018年10月11日 (木)

露天風呂幻想

奥行きのあるS字の庭に7つほどの岩風呂が湯気を上げている。

月のない闇夜である。

細い雨が時折落ちてくる。

電灯がぽつりぽつりと灯り、

深い影の面に、白い湯気と庭木のしずくがうつしだされる。


闇の向こうから裸の女がゆらゆらと現れる。

白いからだが一瞬光に照らされるがすぐにまた影となる。

光りに浮かび上がるやわらかなシルエットが

ゆっくりこちらに近づいてくる。

若いのだか年増なのか逆光で顔も定かでない。


見とれていた私の後ろで水音がしたような気がしてふりむくと、

白い手ぬぐいをかぶった美しい女が、

湯船の中で空をみあげていた。

つられて私も目を上げれば、

厚い雲が切れ、

群青の空に星がひとつふたつ光っていたのだった。

薄雲の向こうにさらに、1つ2つ3つと星を求めた。

月の所在はいまだ明らかでない。

空の大半はまだ雲のものである。


ひととき空の事情に心を奪われ目をもどせば女の姿はなく、

音も立てずどこへ行ったやらわからない。

塀の向こうの藪がざわめいている。

闇夜にまぎれ、獣が湯につかりにきたか。


奥からは裸の女たちが立ち現れては消え、

にんげんの女のほうが姿がつかめず、よほど異界の者のように

ゆらりゆらりとのびちぢみし、

湯につかり、湯気を分け、

黙ってまた奥の闇にすいこまれていったのです。


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2018年10月 2日 (火)

バンドマン

数年ぶりに岩手の釜石の復興音楽祭に参加した。

久しぶりのなつかしい人たち。
聞き馴染んだ音。
かつて大槌の仮設に音楽好きが運営していたライブスペースで、
一緒にライブをやったムーミンズも来ていた。
年の頃も同じくらいの、聞いてきた音楽もよく似ているバンド。
数年前。
真っ暗な仮設商店街の夜に
一つだけ明るいプレハブ。
夜は誰も居ないからと、ロックの音量を気にせず
盛り上がった。
津波のさらっていったものが、まだ生々しく傷跡を開いた街で
彼らは
ひとときの音楽のよろこびをまきちらしていた。
わたしは
うまいとかへたとか、お金とか権威とか、売れるとか有名とか
そういうことから遠く離れた
この生きている喜びの叫びそのものの演奏に
深く感動したことを思い出したのです。
かれらは、この日も
仲間との
音楽の喜びにあふれていた。
バンドって、
ほんとにいいな〜としみじみおもったんだ。

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