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2014年1月26日 (日)

けんじくんのこと 6

夏があんまり気持ちよくて、ふらふらと海にもぐりにいったら、そのまま旅に出てしまった。

けんじくんといるのが、あんなに心地よかったはずなのに旅に出たらすぐに好奇心が勝った。

しばらくはそうだった。

毎日がものめずらしく、一筋縄では過ぎてくれなくて、わたしのからだ

ひとつで何もかも解決しなくちゃいけなくて、死に物狂いで、ここちよく、まるでひとりでぜん

ぜん大丈夫な心持になっていた。

そうしてかえってきたら、けんじくんが、「おかえり」といってくれた。

そのとき心の中がほわっとあたたかくうれしかった。

あれは、いったいどんな気持ちだったんだろう。

きっとわたしの中には矛盾するいろんな自分が入っているんだ。

そのどれもが本当なんだ。

私はそのどれもが本当ってとこから、いまだ動けないでいる。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

久しぶりのけんじくんはやっぱり、大きくすこし、しかくくて、わたしよりももっと、

どれかを本当として、生きやすそうに見える。それでますます、どっしりしている。

首から背中の毛がすこし濃い色になった。その変わったかんじの感触を楽しんでいたら

また、昔話をはじめたようだ。

戦いに勝利した後の負けた村の、死んだ娘さんの生き残ったおばあさんのはなし。

けんじくんはいつも勇ましい戦いの話をするのに。

今日はすこしちがう。苦しそう。

けんじくんも時々、「どれもが本当」って気になるのかもしれないなと、おもった。

わたしがもっと大きかったら、抱きしめてあげるのに。

わたしはいつまでも、けんじくんの背中の毛をゆっくりとなででいた。

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コメント

首から背中の毛がどうなるのか、気になります・・・・・・

投稿: | 2014年1月30日 (木) 15時52分

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