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2013年6月20日 (木)

けんじくんのこと 3

夕方になると、ときどきいっしょに裏通りの焼き鳥屋さんに行く。
けんじくんはいつも、「鳥皮と、レバー、たれで。」って言う。
わたしは、鳥皮は塩のほうがすきなんだけど、黙っている。
けんじくんが何を思っているのかいつも知りたいと思うから。

けんじくんはおおきな体をしているけれど、案外お酒が弱くて、まだビールを飲んでるうちに酔っ払ってしまう。ビールの次は焼酎に決まってるのにそこにたどり着く前に、真っ赤になって落ち着きがなくなってくる。
けんじくんは狭いところが嫌い(大きいのでたいていどこでも狭い)なので、広いところに出たくなるのだ。
だからいつもわたしは呑み足りない気持ちで(わたしは結構お酒が強い)おあいそにする。

外はでもとっぷり暮れていて、いい具合の夜が出来上がっている。
梅雨の晴れ間の涼やかな風が私たちを通り過ぎていく。
わたしはたいていコンビニでワンカップを買って、呑みながらふたりでふらふら歩く。
けんじくんの首のところの柔らかな毛が気持ちよさそうに流れていて、またわたしはそこに触りたくなる。
けんじくんの声がすこしかすれて色っぽいな。
どこかあそこらへんの物陰でもっと接近してあれやこれやしたいな、
などと思っているが
けんじくんは気持ちよさそうにご機嫌で、
アスファルトの道はどこまでも続いていて、
上ってきたお月様が行く手に
私たちを明るく照らしているのでした。

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