穴5
- それが過ぎ去ったあとは、焼け野原みたいだった。ぼくらは呆然と立ち尽くし、失ったものの大きさに圧倒されるばかりだった。どれくらいの月日が流れただろう。ぼくは、ある早春の日、そこにたどり着いた。ちいさな赤い鳥居のむこうにほらあながつづいていた。かたわらの湧き水でていねいに手を清め、その暗闇に入っていった。そこはすこしあたたかくしめっていて僕をやわらかく包み込むようだった。そうだ、必要なのは再生。失った者たちをかなしみながら、ぼくはきみと新しい命をうみだすことができる。どこかで鐘が鳴る。ぼくらはなんどでもくりかえす。喪失を。再生を。おろかな誓いを、今日もまたちかう。そして、きみと希望のしげみへ。
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